ゲーム製作者のインタビューに出てくるのはどうして男性ばかりなのか、と思ったことがありますか?ゲーム産業での女性の困難と、それを乗り越える彼女たちが切り開くゲームの新地平を見ていきましょう。


Newzoo が発表した調査データによると、ゲーム市場では男女比が均衡化しつつあります。36%の女性が余暇としてゲームをし、主に携帯で暇をつぶしています。そのため、競争の激しいゲーム産業から女性向けゲームも頭角を現わしはじめました。その陰にいるゲームデザイナーは、次世代のゲーム産業の女性パワーの代表であり、ゲーム産業にいい影響をもたらしています。

立ち上がる女性プロデューサー

2017年の冬に作り上げられた超人気女性向けゲーム『恋とプロデューサー』は、1か月も経たずに App Store の無料ゲームランキングで2位になりました。美しい画風や、ステージデザイン、ストーリーなどが多くの女性を魅了したこのゲームのプロジェクト責任者は、20代の孟娟です。彼女は去年、アップル大中華圏国際女性デーの円卓会議に出席しました。このことは、ゲーム業界における最近の女性の出世を示していると言えます。

職場では、未来を心配せず、ただ今に専念します。孟娟はそんなゲーム産業での4年間の経験について語りました。結果として、彼女は社員の7割が女性のゲーム会社で『恋とプロデューサー』でいい成績を収め、ゲーム産業だけでなく、ほかの産業で働いている女性たちをも勇気づけました。

同じく人気の育成ゲーム『旅かえる』のプロデューサー、社会学部出身の上村真裕子は、入社3年目、26歳の時に、1千万ダウンロード数を超えた、みんなに愛されるモバイルゲームを設計しました。上村真裕子がこのような成績を収めたのは、会社「ヒットポイント」からのサポートの功績も大きいです。『ねこあつめ』から『旅かえる』まで、ヒットポイントは女性社員に女性向けの市場を開拓するチャンスを与えています。

女性向け市場のほかに、女性リーダーもマス市場へ進出しています。たとえば、コンピューターゲームの開発・販売会社「ユービーアイソフト」に勤めていたジェイド・レイモンド(Jade Raymond)は、人気ゲーム《アサシンクリード2》や、《アサシンクリード・ブラッドライン》、《スプリンターセル・ブラックリスト》、《ウォッチドッグス》の製作総指揮を務めました。

大学卒業後、「ソニー」へプログラマーとして就職し、その後、「ユービーアイソフト」でモントリオール・スタジオの最高経営責任者まで昇進し、《フォーブス》誌の「ゲーム業界で最も優秀な女性10人」の1人に選ばれました。その後「グーグル」に入社し、新たなクラウドゲームサービス「スタディア(Stadia)」の責任者を務めています。

女性ゲームプロデューサーとして、レイモンドはインタビューにおいて「ゲーム業界で女性は多くないが、女性開発者が制作したゲームのコンテンツのほうが女性プレイヤーのニーズに合っている」と、女性のゲーム産業への進出の重要性について話しました。レイモンドは常に女性のゲーム産業への進出を促進しています。さらに多くのプレイヤーのニーズにこたえるのは、開発者としての役目だから、これからのゲーム産業の男女比の均衡も大事だと述べています。

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男性視点から多様性の視点へ 変わっていくエンタメ市場

女性とゲームとの関係は、常に学界、企業、社会の注目を浴びています。ゲーム市場で少数だった女性が増えつつあり、今では半分に近づいてきました。しかし、ゲームにおける性差別とセクハラは今でも潜んでいる問題です。

特にゲームで遊んだことがなくても、ゲームの CM などからも女性キャラクターへの物象化とステレオタイプが伺えます。たとえば、露出の多い服、特定の身体パーツの強調、色っぽい言動など、これらは深刻な性差別です。またプレイヤーに対しても、ゲームのメインキャラに関する選択肢の欠如は問題です。

Frontiers in Psychology誌に掲載された研究によると、メインストリームのゲームの中で女性はいまだ過小評価されています。女性が出てくるとなると決まって救われる、あるいは支配されるお姫様であることがほとんどです。また、80%以上の女性キャラクターが、セクシー、露出の多い服を着る、見た目がいいの3つのタイプに描かれています。女性キャラの性的にキワドイ言動も、プレーヤーを魅きつける理由の1つになっています。

任天堂の衰えない看板ゲーム《マリオ》シリーズにおける、お姫様を救い出すというパターンも、ステレオタイプの明らかな例です。

キャラクターだけでなく、ゲーム産業における女性従業員への差別も頻発しています。一昨年、ゲーム業界で騒ぎを起こしたのは、世界的に有名なゲーム《リーグ・オブ・レジェンド》(LOL, League of Legends)を開発した会社、ライアットゲームズでした。退社した社員がメディアへの告発により、社内の性差別とセクハラに満ちた職場が発覚しました。

ゲーム産業におけるジェンダー問題が及ぼす影響はこれだけではありません。性差別とステレオタイプがゲームに用いられたら、それが知らず知らずのうちに体と心が成長過程にある青少年に移ってしまいます。青少年がゲームにのめり込むほど、ステレオタイプを持ったり、性差別したりする傾向にあるという研究結果もあります。

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現在、女性向け市場の開拓のほかに、ゲーム会社はジェンダーの多様性にも力を入れています。2016年、エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)はすでに人気シミュレーションゲーム《シムピープル》(The Sims)シリーズで、男女のほかにも、性別二元論の枠から解放された、ジェンダーの多様性が見られるキャラクターをつくりました。プレイヤーはトランスジェンダーのキャラクターを作成し、自分にふさわしいキャラクターを実現させることができます。その後、多くのゲーム会社が見習い、同性結婚や LGBTQ キャラクターを取り入れました。

NPO団体の国際ゲーム開発者協会(IGDA)の代表に選ばれたのは2人の女性でした。彼女たちは、将来のゲーム産業の多様性と包摂性の促進は、プレイヤ―と開発者の成長を促す重要なカギだと述べました。調査によると、現在のゲーム開発者のうち、20%が女性です。ゲーム開発団体が奨学金や福利厚生を提供するほか、ゲーム産業全体もさまざまな支援を提供し、多様性の改善を図っています。

男性を主なターゲットとしてきたゲーム産業を変えるには、プレイヤーもゲーム産業自体も積極的にLGBTQを包摂していくことです。違う立場からデザインすることで、未開拓の市場や客層を発見できる可能性があります。エンターテイメントこそゲームの本質で、だからこそ LGBTQ キャラクターに自分を重ねたり、癒されたりできるよう、人々を楽しませ、ゲームの意義を果たすべきです。