おっぱい大きいなあ、腰細いなあと、AV 女優の体を見てうらやましく思ったことがあるでしょうか。しかし、AV 女優にだって体のコンプレックスがありますし、待遇もよくありません。


2019年9月5日、元 AV(アダルトビデオ)女優のミア・カリファ(Mia Khalifa)が BBC のインタビューで、AV 女優だったときの経験と感想を話しました。業界人に声をかけられて AV 業界に入ったのは、21歳のときでした。キレイだとほめられ、ヌードモデルにならないかと誘われた彼女は、相手に惑わされ、何が起きているのかを把握できないまま、契約書にサインしました。

カリファは再生数が億を超えるほど大人気になり、会社とポルノビデオプラットフォームに何百万ドルもの収益をもたらしたにもかかわらず、女優である彼女の報酬は、わずか1万2千米ドル(およそ130万円)に過ぎませんでした。なお、このような不平等な報酬制度は、AV 産業ではめずらしくありません。

番組の司会者に、会社にお金を稼ぐための道具としか見られていないかと尋ねられたカリファは、ためらわずに頷きました。


ナイスボディーでもコンプレックスがある

大きい胸に細い腰、上向き美尻、これらを持っているカリファは紛れもなく典型的な美人です。しかし、自分の体こそが、彼女に恐れと悩みをもたらしもします。

「子どものころは体重のことでずっと悩んでいました。自分のことが魅力的だと全然思えませんし、男たちが振り向くなんて考えもしませんでした」

そしてカリファはダイエットを始めましたが、痩せると胸が小さくなりました。彼女はとても悩んでいました。

「胸が私の1番のコンプレックスです」

彼女は胸を元のサイズに戻そうと、いろいろな方法を試してみました「そして私は男性に注目されるようになりました。そういう視線にはどうしても慣れません」

「今のままでいて、言われた通りにして、期待に応えないと注目されなくなる、そういう気がします」

カリファのように、自分の体にコンプレックスがある女性は多くいるでしょう。

女性が外見でどう批判されるのか、今までたくさん耳にし、経験したことがあるでしょう?そのように女性がからかわれる原因の1つとなっているのが、メディアの作り上げた女性像です。

Joy Magezis は著作『女性学独学』(Teaching Yourself Women’s Studies)で「メディアは大抵、主体としての女性の内面を描かず、客体としての女性を男性の視点で描く」と指摘しました。

8月6日、私たちはフェイスブックで「遭ったことのある外見批判を一言で」を募集し、1,000件くらいのコメントが集まりました。コメントから、外見でからかわれた経験がある人が大勢いることがわかります。

「どのような家庭に育っても、誰にだって自信に欠けているところがあると思います」

自分で決めたことだけど、断ることができなかった

AV 女優をやめた今でも、カリファは過去から抜け出すことができません。撮ったビデオはこれからも見られるし、削除を要求する権利もありません。しかも、相応の報酬や補償をもらうことすらできず、心にできた大きな傷に押しつぶされそうです。特に人前では、焦燥と恐怖を感じます。

「周りからの視線はまるで服を脱がされるようで、ひどい恥ずかしさを覚えます。プライバシーを全部なくした気がします。とはいえ、グーグルで調べてみると私が出てくるので、確かに失ったのですが」

彼女は AV で、ヒジャブを被っている女性を演じたことで批判されました。しかしそのとき、これはムスリムへの煽りだと思って、確かに断りました。

「私は殺されてしまうよと、スタッフに言いましたが、彼らはただ大声で笑いました」

自分の考えを話そうとしても、とにかく怖くて緊張していて、どう強く断るのかも知りませんでした。

写真|インスタグラム

「黙る」から「話す」へ。難しいがやらなければならないこと

「自分のことを被害者だとは思っていません。その言葉が好きじゃないです。最悪の判断でしたが、確かに私が決めたことですから」

全てが過ぎたことのように見えますが、できた傷は今でも痛みます。同じ経験をもつ女性たちが声をあげて、立ち向かう勇気をもたらそうと、彼女は今立ち上がり、AV 産業に対し、自分の意見を述べると決めました。

ある瞬間に、気味悪い、何かが違うと感じたとしても、自分が大げさに考えているだけじゃないかと心配して言えなくなった経験があるかもしれません。女性が声を上げ、自分の意見と気持ちを打ち明けることができるようになることを切望しています。

カリファの話から、世間とジェンダーシステムがどのように人に影響を与えるのかが分かります。

個人的なことは政治的なこと(personal is political)。身体的なコンプレックスや、男性の視線、勇気を出して断れないことなどは、誰もが直面する可能性のある困難です。女性が批判なんて気にせず、自分の体を心から好きになり、断る権利と力を手に入れることを願っています。