子どもの寝かしつけにおとぎ話は欠かせません。しかし、古くから伝えられてきた物語にも、性差別やステレオタイプが潜んでいる恐れがあります。


毎晩、3歳の娘を寝かせるには、いつも呪術のような寝る前の決まった儀式を行わなければなりません。

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ステップ1:夫と交代で歯医者を演じて、娘といっしょに並んでいる娘の想像上の友達を診察してあげます(歯を磨く)。

ステップ2:3人で呪文を唱えるかのように、先生を含めてクラスの全員の名前を暗記します。

ステップ3:親子で寝る前のお話をします。

先日、娘を「国際アンデルセン賞図書展」に連れていったので、オンライン書店で受賞者の絵本を何冊か買いました。その夜、寝る前の儀式のステップ3に入ると、私はワクワクしてその中から一冊をとり、娘に読もうとしました。

さすが国際的な賞を受賞した作品だけあって、本をまだ開いていなくても、すぐ表紙の色とりどりの配色と子どもっぽいコラージュに惹かれました。私は娘を抱き、心地よく枕にもたれて、本を読みはじめました。

物語の主人公、花に囲まれた小さな王国に王様が住んでいました。王様は幸せではありません。王様として何不自由ない生活を送り、国中の人に好きなだけ命令してもいいはずなのに、王様は幸せではありませんでした。

王様は、自分を心から幸せにしてくれるものを欲していました。

王様は考えました。そして、王様は何が必要なのかわかりました。「必要なのは、1人の姫だ!」王様は山を越え、雨に降られ風に吹かれて、探し回ってようやく、おとなしくチューリップのつぼみの中にいたお姫様を見つけました。

「王様とお姫様はようやく、お互いを見つけたのです!」もちろん、それから王様とお妃様は幸せに過ごしました。終わり。

読んでいくうちにどんどんむかついてきました。読み終わって、私は気に入らずに本を閉じて、娘をびっくりさせました。

「ママ、どうしたの?」と娘が理解できなくて聞きました。

「この絵本は間違っている。幸せはこうやって探すものじゃない」

「王様は幸せになったけど、お姫様は全然幸せじゃないの」

「うん?」娘はそれでも困惑した顔で長いあくびをしました。

「もう寝なさい。ママまた話すから」

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娘といっしょに横になって、頭の中でぐるぐる考えていました。このような「男性視点」のお話は、社会を動かす真実であるべきではないということを、3歳の子どもにどう説明すればいいでしょうか。この色とりどりで子どもの目を引く絵本は、女性が自分は「受動的で、救われる客体だ」というメッセージを受け取る、そんなセリフが隠されていることを、どう説明すればいいでしょうか。

この絵本のキャラクター設定では、お姫様は王様を「幸せにするもの」で、王様と結婚したのも「王様の希望」を満たすためでした。お姫様はただ受動的で、光の見えないつぼみの城にいて、王様の指1本も、髪の毛1本も見たことがないのに、どうして王様と「互いを見つけた」といえるのでしょうか!?

恐ろしいことに、これは受賞した世界有数の作家が書いた絵本です。このような考えは、今までどれぐらいの男の子と女の子たちに影響を与えたのでしょうか?

アメリカのブリガム・ヤング大学(Brigham Young University)のサラ・コイン教授(Sarah M. Coyne)などが2016年に雑誌《子ども発達》に載せた研究によると、プリンセスのキャラクターは、子どもに「ジェンダーフレーミング効果」を及ぼします。

この研究は、198人の学齢前の子どもを対象に調べました。そのうち、96%の女の子と87%の男の子がディズニーの映画を見たことがあり、61%の女の子は少なくとも週に1回プリンセスの人形で遊びますが、同じようにプリンセスの人形で遊ぶ男の子は4%しかいません。

ディズニープリンセスが好きな女の子たちは1年後、より明らかなステレオタイプな行為をすることで、勉強において自分に限界をつくってしまいます。たとえば、「女性らしくない」「淑女はそんなことしない」といった理由で、特定の勉強をしないようになるなどです。自分のことをお姫様だと思っている、あるいはお姫様らしくなりたい女の子たちは、数学や化学などに対して自信を失くしがちです。また、失敗することを避けたいので、新しいことをしたり、何かを試したりしません。

「親はディズニーのプリンセス文化を無害だと思っています。親たちから『無害』という言葉を何度も聞きました。しかし、親は『プリンセス文化』が子どもに与える長期的な影響を真剣に考えるべきです」

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私が小学3年生だった頃、家族全員でお父さんの会社が行った社内イベントに参加したことがありました。晩ごはんの時間に、お父さんの同僚のおじさんが、人懐こくて、大人からの質問に何でも答えられて、口の立つ私を見て、みんなの前で「最高評価」をくれました。「Aさん、娘さんは堂々としていて、口も立つし、ちゃんと育てれば、将来はきっとこの国の副大統領になれますよ!」と、おじさんがお父さんに言いました。

「なんで?やるなら大統領をやるでしょう!」と私が即座にかっこよく答えたことを、今でもはっきりと覚えています。

女の子の心の中に、ガラスの天井なんてありませんから。ただ、走るなら1番速く、飛ぶなら1番高く、何をするにも1位を目指すだけでした。1位になれるのに、なぜ伝統的な価値観にしばられる必要があるのでしょう?